劇団ワンツーワークス #25

私は世界

[作・演出]古城十忍
2018年7月20日(金)~ 29日(日)
赤坂RED/THEATER

上演に寄せて

「自己責任」という摩訶不思議な言葉。 古城十忍(作・演出)

7月6日、シリアで行方不明になっているジャーナリスト、安田純平さんと思われる動画が公開された、と日本の多くのマスコミが報道しました。動画のでどころはシリア人男性のfacebookで、拘束した過激派組織の名前(シリア征服戦線)や、撮影された日付(2017年10月17日)もニュースとして伝えていましたが、その詳細や真偽のほどはわかっていません。ただ一つはっきりしているのは、安田さんが今なお日本に帰れていないという、その事実です。
紛争地取材で拘束されたジャーナリストのことを芝居にしてみようと私が思い立ったのは今から1年以上も前のことなので、初日が近づくなか、安田さんの新たな動画公開のニュースには私自身、非常に驚かされました。
安田さんは2015年6月にシリアに入ってまもなく拘束されたとみられており、消息を絶ってすでに丸3年以上が経過しています。今回の動画の投稿に関わった人によると、「現在の安田さんの健康状態は非常に悪い」という情報もあり、安田さんの無事を、そして一刻も早い帰国を願わずにはいられません。

実は、安田さんが武装組織に拘束されたのは今回が初めてではありません。2004年4月にも、取材で入ったイラクで拘束されています。このときは3日後に解放されましたが、帰国した安田さんを待ち受けていたのは「自己責任」という名の容赦のないバッシングでした。
というのも、安田さんが拘束されるわずか1週間前に、ボランティア活動家の高遠菜穂子さんら3人の日本人が同じイラクで拘束されていたからです。この事件はカタールのテレビ局「アルジャジーラ」が犯行組織から送られてきた映像を放送し、それが日本でも大きなニュースとして報道されたため、広く日本国民の知るところとなっていました。
犯行組織の要求は「イラクのサマーワに駐留している自衛隊の撤退」。これに対し日本政府は直ちに「自衛隊を撤退させる考えはない」と表明。たぶん、この頃からだったと思います。「行ったほうが悪い、イラクはまだまだ危険なのに。なんで日本政府に迷惑をかけるんだ」という声が次第にまかり通るようになり、高遠さんたちは厄介者扱いされはじめ、「自己責任」という摩訶不思議な言葉はまたたく間に市民権を得るようになってしまったのです。

このことを知っている人は意外に少ないのですが、紛争地で囚われの身となったジャーナリストに「それは自己責任だ」として悪者扱いする国は日本以外にありません。たぶん、日本だけです。アメリカもヨーロッパ諸国も基本スタンスは「政府は何をしている、自国民をすみやかに解放するよう働きかけろ」、です。
2015年にイスラム国に拘束されて殺害されてしまったジャーナリスト、後藤健二さんの痛ましい経緯は記憶に新しいと思いますが、このときも巻き起こった「自己責任論」について、イギリスのBBCをはじめ多くの海外メディアは「日本人特有のもの」として報じています。(BBCは「後藤さんには、いっそ自決してほしいと言いたい」と自分のブログに書いたタレントのデヴィ夫人のコメントに、批判もあった一方、1万1000の「いいね!」が付いた事実も指摘しています)
この日本人特有の「自己責任」という考え方は、その後みるみる広範囲にわたって伝家の宝刀のように使われるようになり、今では「ネットゲーム依存症の若者」「奨学金返済に四苦八苦する若者」「非正規雇用から抜け出せず低収入にあえぐ労働者」「孤独死に至った独居老人」「自殺した人」などなど、まさに日本社会のひずみ・ゆがみの中でもがき続けている人たちすべてに向けられているように思えます。 国や自治体、さらには企業、もっと言うなら小さな集団でさえ、それを動かす人にとっては、「自己責任」という言葉はたぶん便利この上ないです。それはつまり、トップが責任を取らなくていい、ということですから。事実、責任を取らないトップが増えたなあ、と私は思っており、そもそも「自己責任」という言葉をマスコミに吹聴するように仕向けたのは国ではないのか?という疑念すら持っていますが、それはともかく、いやいや、ほんとにますます住みにくい、生きづらい社会に日本はなっていくなあ、と演出家は暗澹たる気持ちになっています。
安田さん、どうか無事に帰ってきてください。
2018年7月

交錯する二つの「自己責任」の物語。日本人の心に潜む奇妙な感情の正体とは 交錯する二つの「自己責任」の物語。日本人の心に潜む奇妙な感情の正体とは

Story 1 危険地域取材の自己責任

フリーのジャーナリストが紛争地で消息を絶ち、1年近くが経つ。大学の後輩だった新聞記者は「救出」に向けて世論に働きかける記事を書こうと、ジャーナリストの母の祈るような毎日を取材していたある日、外科医でジャーナリストの妻から「一切、記事にしないでほしい」と言い渡される……。

Story 2 若者の貧困の自己責任

取材を続ける新聞記者に養護施設から「お父さんを引き取ってほしい」と連絡が入る。仕方なく今後の父の処遇を相談すべく何年も音信不通だった弟に会って、兄は驚愕する。弟は30歳を過ぎてなお年収は200万円程度。非正規雇用で「生きる屍」のような苦しい生活を何年も続けていた……。

日程

  7/20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
14:00   2 4★     7     11 13
19:00 1 3★   5★ 6★ 8 9★ 10★ 12★  

★…アフターイベントあり

21日(土) 公開ダメ出し(1)「ガチでやります」 出演者の誰か×古城十忍
22日(日) バックステージ・ツアー「舞台からの眺め」 案内人:奥村洋治+小山広寿
23日(月) 出演者トーク(1)「私の『私は世界』」 阿部丈二+砂原健佑+奧村洋治+関谷美香子
24日(火) 出演者トーク(2)「自己責任に思う」 池田努+今本洋子+関谷美香子+奧村洋治
26日(木) 公開ダメ出し(2)「まだ、できませんか?」 出演者の誰か×古城十忍
27日(金) スペシャル対談(1)「貧困にあえぐ若者」 藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事)×古城十忍
28日(土) スペシャル対談(2)「なぜ戦争を取材するのか」 綿井健陽(ジャーナリスト、映画監督)×古城十忍

チケット

発売日

一般前売り開始
2018年6月9日(土)

料金(全席指定・税込)

一般(前売)
4,800円
一般(当日)
5,000円
学生
3,000円
初日割(前売り)
4,000円
  • *「学生」は当日、会場で学生証の提示が必要です。
  • *「初日割」チケットは、7月20日(金)の回のみ。
  • *受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。
  • *10歳未満の児童はご入場いただけません。

取り扱い

ワンツーワークス
fax:03-5929-9131
mail:25ticket@onetwo-works.jp
チケットぴあ
0570-02-9999 (Pコード:486-633)
http://w.pia.jp/t/onetwo-works/
チケットぴあ店舗、セブン-イレブン、サークルK・サンクスでも直接販売
e+(イープラス)
http://eplus.jp/onetwo-w25/
ファミリーマート店内Famiポートで直接販売
Confetti(カンフェティ)
WEB予約 :  http://confetti-web.com/watashiwasekai/
電話予約 :  0120-240-540 (平日10:00~18:00)
CoRichチケット
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お問い合わせ

ワンツーワークス
https://www.onetwo-works.jp
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南1-8-3
佐保会東京会館101
tel:03-5929-9130  
fax:03-5929-9131
私は世界

(チラシ pdf)

劇場

赤坂RED/THEATER

東京メトロ丸の内線・銀座線
【赤坂見附駅】(10番出口)より徒歩2分
東京メトロ千代田線
【赤坂駅】(2番出口)より徒歩6分

〒107-0052
東京都港区赤坂3-10-9
赤坂グランベルホテルB2

※劇場入口はホテル入口と異なります。
お越しの際はご注意ください。

TEL:03-5575-3474
ロビー直通:03-5575-7132(公演期間のみ)

スタッフ

  • [美術]礒田ヒロシ
  • [照明]磯野眞也
  • [音響]黒澤靖博
  • [舞台監督]尾崎 裕
  • [演出助手]日置なお/鈴木杏奈
  • [ドラマトゥルグ]白坂恵都子
  • [衣装]友好まり子
  • [大道具]イトウ舞台工房
  • [イラスト]古川タク
  • [デザイン]西 英一
  • [スチール]富岡甲之
  • [舞台写真]黒木朋子
  • [票券]アイオーン
  • [協力]アイズ/石原プロモーション/劇団朋友/Gプロダクション/Sony Music Artists/タクンボックス/ホリプロ・ブッキング・エージェンシー (以上50音順)/一二の会
  • [助成]文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
  • [制作]藤川けい子/北田夢々
  • [制作協力]田窪桜子
  • [製作]㈱オフィス ワン・ツー