Welcome to On Line Theater

 この『リセット』には、過去に上演した『ONとOFFのセレナーデ』『眠れる森の死体』 『イエスマンの最後のイエス』に登場した人物が再登場します。過去、それぞれの物語を紡いだ人物たちが新作で出会って、新しい物語を生み出すとしたら、そこにはどんな思いや悩みがこぼれ出てくるのだろう。そこがスタートでした。過去の体験はそれぞれ違うとはいえ、死にまつわる経験をした彼らが新たに紡いだ『リセット』という物語は、やはり死とは無縁ではいられなかったようです。
 不思議なことに、昔懐かしい友達と再開するような思いで彼らとともに「死」を考えることは、実に楽しいことでもありました。だぶん死について考えることは、生きることを考えることと同じように、楽しくて、愉快なことなのかもしれません。

1996年7月・古城十忍

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松浦景浦 越村市川
23:59

白衣の男しょうがねぇんだけどなぁ
市川は?
白衣の男(名詞をかざし)もらっても。
市川仲良くしてやってくださいよ。もう先生の手となり足となり、ご期待に添えるよう何でもやらせていただきますから。
白衣の男……(自分の名刺を差し出す)
市川あ、恐れ入ります。(受け取って見る)
白衣の男気持ちは嬉しいけど。
市川景浦守……ニホン葬儀……。

景浦独りになると、ソファに開かれたままの分厚い本が目にとまり、ページをめくって見て、表紙をのぞく
いつのまにか、パジャマの男がソファの上に座っている……。
景浦本を置くと、それからまたデジタル時計を見やり、やがて目をそらして行こうとすると−。
23:59

パジャマ男先生。
景浦………。(足が止まり、怪訝に振り替える)

0:30〜1:00

景浦が携帯電話を耳に押し当てたまま、何かに目を奪われて立ちつくしている。奪われているのは目ではなく耳、あるいはその両方であるのかもしれない。
立ち尽くす景浦とは対照的にデジタル時計は動き続ける。しかもその動きが異様に速い。
点滅しはじめる緑色の、これは何かのランプであろうか。不意に大写しになる数字。
音楽は流れ続ける。
何かに向かっていくように。何かを駆り立てるように。何かを訴えるように。強く。激しく。やがて、優しく柔らかく穏やかに、すべてを、一切を、包み込むように。

市川……景浦さん!EメールのID…….
0:30

後を追おうと市川、磯井で鞄や分厚い本など自分の荷物を抱え持つが、ふと足が止まってしまう。
それから戻って荷物を抱えたままソファに座り、ヘッドホンを耳に音楽を再生する。
そして残りのジュースを飲みほすと、いきなり空缶を握り潰す。
市川、ゆっくりと頭を抱える……。

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