「愛しすぎる男たち」のチラシ 第29回公演
愛しすぎる男たち
1996.3/26(Tue)--31(Sun)
Theme:体外受精 Place:シアターサンモール


上演にあたって

女性の皆様。
結婚相手を選ぶ基準は何ですか?あなたの結婚相手はそのまま、あなたの子供の父親になる。ごく当たり前のことですが、もし夫と子供の父親を別々に選択できるとしたら、あなたは父親をどんな基準で選びますか? SEXを介さないベビー誕生の世界は今、すさまじいスピードで進歩しています。それは不妊に心を痛める女性たちへの福音であると同時に、女性の体を実験台にした医療技術の飽くなき競争のようにも映ります。

戸籍の母、産みの母、遺伝子の母。ニュースで体外受精のあれやこれやが取り上げられるとき、産む性であるがゆえに、スポットはいつも女性に当てられています。けれど生命誕生には必ず、どこかで男たちが関わっているはずです。ならば生殖革命の進歩の是非が問われる今、この世界で主役に踊り出てしまった男たちの物語もきっとある。それが幸か不幸かそれはさておき、そんな思いから『愛しすぎる男たち』は産まれました。

男性の皆様。
本当に驚くほどに今、不妊治療の技術は進んでいます。男たちは現在、何ゆえに男なのでしょう?一昨年の秋に初演したこの芝居は、1〜2年もすれば上演できなくなると思います。現実が芝居の世界を追い越してしまうからです。そんな気がしてなりません。

1996年初春__古城十忍






【あらすじ】
ある日、サラリーマンの藤枝は「潟tァミリー・クラブ」という結婚相談所で、どこか風采のあがらない、芳野という男と出会う。
芳野はファミリー・クラブで知り合った芳子という女性と2年前に結婚。芳野自身が完璧な避妊を続けていたにも関わらず、芳子が妊娠してしまったという。
芳野&藤枝photo
藤枝「芳野芳子……?」
芳野「女房、知ってんのか?」
藤枝「妙にゴロのいい名前だから覚えているんです。お客としてきましたよ」
芳野「お客としてって、お宅、銀行か何か……?」
藤枝「銀行は銀行なんですがね」
芳野「まさかサラ金……?」
藤枝「ベイビー・プレゼンツです」
芳野「ベイビー・プレゼンツ?」
藤枝「精子バンクですよ」
芳野「……!」
潟xイビー・プレゼンツは昨年設立された日本初の精子バンク。業界参入が相次ぐ中、今や業界最大手に成長。藤枝はそこの営業マンだったのだ。
こうして、芳子が精子バンクから他人の精子を買った事実が発覚。
でもなぜ、芳子はわざわざ精子を買ったのか?
その謎を解くべく、芳野に拝み倒された藤枝が動機を追求していくと、やがて芳子が子宮内膜症から不妊に悩んでいたこと、さらには芳野自身の無精子症も明らかに……。

芳野の気持ちは大きく揺れる。
悩んだあげく、他人の子を身ごもった妻とその夫は、夫の優しさから新しい夫婦の姿を見いだしたかに思えたのだが、超音波診断の結果、芳子の体内には5つ子がいることが判明。苦しい治療の末にやっと恵まれた子供なのに、今度は中絶しないと母体自体も危険な状態になると担当医に宣告される……。

夫婦の気持ちは再び大きく揺れ動く。
人工的に、人の手によって身ごもった子供を、再び人の手によって中絶する。
果たして人間は、どこまで「生殖という神のベール」を剥ぐことができるのか?
夫婦が答えを出せず、藤枝もまた精子バンクそのものの存在意義を疑い始める中、担当医は新たな提案をもちかける。
それは5人の子供のうち何人かを恣意的に選び取って中絶する「減数手術」だった。
芳子のおなかの中では5人の子供がすくすくと育っている。
そしていよいよ、タイムリミットの日が訪れる……。


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劇団一跡二跳

制作:岸本 匡史