とにかく「自由であること」
演出/伊藤 大

権力は力――人を疑い、恫喝し、暴力によって退ける。
力、力、力──ほかに力のあるやつはいらない!
そんな「力」によって支配された宮廷から追放された人々がたどり着いたのはアーデンの森
そこは「力」はいらない別天地。心の赴くままにふるまえる自由の王国だった。

「在外研修の成果」という名目で一つ作品をやらないか、というお誘いをいただいて真っ先に頭に浮かんだのが『お気に召すまま』でした。というのは、在外研修に行かれた方は今や数知れず(長年の文化庁のご尽力の賜です)、それゆえ一本に結ぶ糸がなかなか見つけにくいのです。ならばそれを逆手にとってしまおう。普段一緒に舞台に立つことさえ想像しにくいくらいいろいろな方たちに、性別も何も関係なくこの役をこの人がやったら面白いんじゃないかという発想だけを頼りに集まっていただきました。つまり、文字通り「自由」に発想して舞台を作ろうと思ったのです。

長年のつきあいを通じてこんなヒントをくれたのは、今や毎年のように在外研修員を学校に受け入れている、そして僕自身も師として仰ぐフィリップ・ゴーリエ氏の数々の教えです。彼のワークショップを開催するにあたっても文化庁にはお世話になっております。で、フィリップ仲間も結構参加しております。その辺もご期待くださいませ。

存分に「自由に」想像力を遊ばせてほしい。


文化庁の在外研修制度(海外留学制度)が始まって早くも40年になりますが、その演劇部門の成果公演も19年度で3回目を迎えます。
第1回は山下悟氏(演劇集団円、平成7年度派遣)の演出で『クーランガッタ・スクランブル』が、 第2回は古城十忍氏(一跡二跳、平成16年度派遣)の演出で、新訳による『メアリー・ステュアート』が上演されました。第3回は伊藤大氏(青年座、平成7年度派遣)の翻訳・演出で『お気に召すまま』を企画いたしました。
伊藤大氏をはじめ、派遣経験者が違う価値観の中で生きる人々に、人生の素晴らしさを学んだ在外研修そのものの成果として上演いたします。


[あらすじ]
フレデリックは兄である公爵を追放してその地位を奪ったが、兄の娘ロザリンドは手元に置き、自分の娘シーリアと共に育てていた。オーランドーは、父の遺産を相続した長兄オリヴァーによって過酷な生活を課されている。公爵主催のレスリング大会で優勝したオーランドーはロザリンドに出会い、2人は互いに一目惚れする。
公爵から突然の追放を言い渡されたロザリンドは、男装してシーリアと道化を連れ、追放された父が暮らしているというアーデンの森へ向かう。オーランドーもまた、自らの運命を切り開くために兄の元を離れ、行き着いたアーデンの森で前公爵に助けられる。
男装したロザリンドは森に暮らす羊飼いたちの恋愛騒動に巻き込まれる。また、オーランドーは男装したロザリンドの正体に気づかずに、彼(彼女)に恋の告白の稽古相手になってもらう。
森で危ないところをオーランドーに救われた兄オリヴァーは改心し、土地の娘に身をやつしたシーリアと結婚して羊飼いとして暮らすことを決意する。兄を討つため森に入ったフレデリック公爵もまた改心し、奪った地位と領地をすべて返上する。ロザリンドは女の姿に戻り、結婚の神ハイメンからの祝福を受け、何組もの恋人たちの結婚式が行われる。



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劇団一跡二跳
制作:岸本 匡史