「自殺はなぜ起こるのか?」
「自殺へと向かう人の心は何を見つめているのか?」――。


我が国での自殺者の数は年間3万人を超える。1998年に3万人を突破して以来、高水準での横バイ状態が続いている。この数字は先進国での中でも飛び抜けて高い。
日本はそんなに生きにくい社会なのだろうか。日本の社会には人を自殺へと駆り立てていく何かが潜んでいるのだろうか。
この作品は、自殺を語ることはまだまだタブー視される現代にあって、敢えて多方面にわたる数多くの方々にインタビューを行い、その証言をもとに舞台化する「ドキュメンタリー・シアター」。
インタビューに応じてくれたのは――
首吊り自殺で長年連れ添った夫を亡くした妻。
電車に飛び込んだ人を轢いてしまった運転士。
青木ヶ原樹海を管轄する富士吉田警察署の刑事。
インターネット自殺サイトの管理者。
自殺対策の法制化に奔走する若きNPO法人代表。
さらに、自殺遺体処理を幾度となく経験した警察官、脳外科医、カウンセラーなど実にさまざまな立場の人々が生々しい体験を語ってくれた。
この数多くの貴重な証言から浮かび上がってくる切実な思い、願い、祈り――。
こうした証言を軸に、私たちが暮らす社会の闇と「命」の尊さについて描く、新たな「生きる物語」。
一跡二跳が挑む「誰も見たことのない」演劇。
ご期待ください。

 

観客一人一人が
「生きていくこと」
を考える


「生きていくこと」をテーマにした「ジョイント・ストック・システム」による創作初演。一跡二跳「生きる」シリーズ第2弾。
「ジョイント・ストック・システム」は演出家・俳優全員が実在の人物にインタビュー取材を行い、そこで得た証言に基づいて脚本を構成していくもので、日本でもようやく「ドキュメンタリー・シアター」という呼び名で知られるようになってきている。劇団主宰の古城十忍は2005年に文化庁芸術家海外留学制度でイギリスに留学し、「ジョイント・ストック・システム」の創作過程をリサーチしてきており、帰国後の2006年には同システムによって書かれた『アラブ・イスラエル・クックブック』(ロビン・ソーンズ作)を翻訳上演している。
本作では、その成果を踏まえ、これまでも数多くの社会問題を舞台化してきた劇団一跡二跳ならではの「ドキュメンタリー・シアター」としてオリジナル作品に取り組む。実在するたくさんの人々に取材を行うため、相当に時間と手間のかかる創作方法だが、この作品を上演することで、ヨーロッパに比べて未発達な「ジャーナリズム演劇」を定着させていきたい。
「自殺防止」に携わっている方、青木ヶ原樹海近辺に住む方、「生きようと戦っている」方など多方面から採り上げることによって、観客一人一人が「生きていくこと」を考えていける、自殺防止に繋がるような作品にしていく。

 


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劇団一跡二跳
制作:岸本 匡史